第六回「野村太一郎 狂言の会 五世野村万之丞(八世万蔵)二十三回忌追善特別公演」上演にあたって 野村太一郎師インタビュー

第六回「野村太一郎 狂言の会 五世野村万之丞(八世万蔵)二十三回忌追善特別公演」を開催する野村太一郎師にお話しをうかがった。

——今回、お父様の二十三回忌追善ということですが、思い出などをお聞かせください。

父(2004年に44歳で逝去)は私が中学生の頃に亡くなりましたが、舞台でも家庭でも厳しい父だったという印象です。私生活が舞台に出てしまう、ということがあって家庭でもだらけないよう、ピリッとして怖い部分がありました。とはいえ、親子ですから家族で遊びに行くこともありましたので、そういう時は楽しくて大らかだったと思います。

——お父様を知っている方は皆さん思っていらっしゃると思いますが、太一郎先生はとても似ていらっしゃいますよね。

それはものすごく言われます(笑)。子どもの頃から言われていましたが、最近特に言われますね。見た目もそうですが、明るくて社交的なところも似てると言われます。自分でも思いますが、ほっぺと眉毛がすごく似ているんですよ。父は身長も高く、幅もありましたから、私も体重管理には気をつけていますけれど、食べ過ぎたりすると、やはり似てると言われます(笑)。

——お父様は「楽劇大田楽(がくげきだいでんがく)」(中世に流行した田植えの芸能「田楽」を、舞踊と音楽の要素を取り入れた「楽劇」として現代に創作したもの)を創作して、長野オリンピックの閉会式の上演、演出をなさるなど、幅広い活躍をされていましたが、太一郎先生も演出に関して今後考えていることはございますか。

私もコロナ中に「楽劇大田楽」の再興をさせていただきました。自分がどういうベクトルでできるかというのはまだわかりませんが、父が目指していたような、お祭りや神事芸能を「楽劇」という形で現代に蘇らせるような演出はしていきたいと思っています。父が作っていたのはもう23年以上前で、その当時の客層の心をつかむような演出をしていたと思います。将来的に私は自分で現代の人に受け入れられる新しい形の作品を最初から作っていきたいと思います。

もちろん、古典の能や狂言という部分は自分が最も大事にしているところです。その自分とはまた別の自分を出しつつ演出の部分をやっていきたいと思っています。幸い、私は能楽師の仲間が多いと思うので、そういう方々に力を貸していただいて、かつ他ジャンルの方との交流を深めて、自分もスキルアップし、新しいことにチャレンジしていきたいです。

——今回の会では追善曲ということで「通円」をなさいますが、なぜこの曲を選ばれたのですか。

追善という意味では、説法をする「魚説法」もいいなと思ったり、父との思い出のある曲の一つ「樋の酒」を先生(野村萬斎師)と演じるのもいいな、とか宇治橋の供養をする「簸屑」も追善曲にはなりますし、いろいろと思いを馳せたのですが…。ただ、今回は自分の会という研鑽の場で、舞狂言(夢幻能の形式でワキ役とアイ役が出て、ワキの供養によりシテの霊が出てくる)というジャンルに初めて挑戦するため「通円」を選曲させていただきました。

「通円」は能「頼政」のパロディですが、お茶を点てすぎて死んでしまうという話を大真面目に能らしく演じるところが面白いんですけれども、演じる方としてはそこがかえって難しいと感じます。前半はワキの僧役を野村裕基さんにお願いして、前半の空気感を作ってもらい、私が通円役として出て行きます。それがどのくらいマッチングできるかという部分も楽しみにしています。

能「頼政」のパロディですので「頼政」の舞囃子をお願いしました。MUGEN∞能(シテ方観世流の坂口貴信、林喜右衛門、狂言方大蔵流の茂山逸平の各師と4人で立ち上げた能楽公演ユニット)でご一緒の坂口貴信さんに舞っていただきます。

——そのほか今回の会の見どころをお願いします。

追善だけどしんみりしていない、というところが一番の見どころでしょうか。そういう意味で演奏を入れたかったので、お囃子方にお願いする曲を選びました。二十三回忌で時間が経っていることもありますが、父自身も「明るく楽しく見送ってくれ」と言っていたこともありましたし、今回も明るくカラッとしたいと思っています。そのような思いから、「咲嘩」を先生にお願いいたしました。

「咲嘩」は詐欺師が出てくる狂言らしい曲です。先生が太郎冠者、私は咲嘩役で初めての挑戦になります。主人役は、私の弟子の松川美韻希が勤めます。まだ十代ですがプロとしての自覚を持って勉強してもらうつもりです。

また、万作先生には「海人」の小舞をお願いしました。それから、昨年に初舞台を踏んだ弟子三名と、連吟「鉢叩」を追善の意を込め謡います。これは今の私や弟子たちを天にいる父に見守ってもらいたいという気持ちがありますね。

大勢の方にお出でいただけたらと思います。

野村 太一郎(のむら たいちろう)
狂言方和泉流。1990年、五世野村万之丞(八世万蔵)の長男として生まれる。祖父は野村萬(人間国宝)。1993年「靱猿」で初舞台。1995年「伊呂波」で初シテ。現在は野村萬斎に師事。


五世野村万之丞(八世万蔵)二十三回忌追善特別公演

2026年10月3日(土)14:00開演 観世能楽堂

【番組】
連吟「鉢叩」野村太一郎
狂言「咲嘩」野村萬斎
小舞「海人」野村万作
舞囃子「頼政」 坂口貴信
狂言「通円」野村太一郎
ほか 

【チケット】
SS席:10,000円
S席:8,000円
A席:5,000円
B席:3,000円(学生2,000円)