① 大小序ノ舞の女性夢幻曲
〈東北、井筒、野宮、半蔀、夕顔、仏原、采女、楊貴妃、二人静、江口、定家、芭蕉、源氏供養(身延、梅)〉
〈二人静〉
この曲の構成は全然異常である。いわゆる両シテの見本のような曲であるが、ツレは現在人の菜摘み女で、後に静御前の霊が乗り移って静の形見の衣裳を着けて舞をまうと、そこへ夢幻人の静の霊が現れて一緒に同じ舞をまうというのだから、寸分違わぬ型を演じながら、一方は霊の乗り移った生きた人間、他方はほんとうの幽霊という趣を演じ分けなければならない。謡だけではさほどのこともないが、能としては、なまやさしいシテやツレではとうてい演ぜられない。先代宝生九郎はそれでこの曲を廃曲にしたと聞いている。
雪まだ残る早春の吉野山に、人も知る義経の愛妾、白拍子静の霊が現れて、生きた人間に乗り移った幻影とともに二人の静の姿となって舞をまうというのであるから、能はむろんのこと、素謡でもよくその幻想に酔って謡わねばならない。
