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【レビュー】世田谷美術館 トランス/エントランス 特別篇「夢の解剖─猩々乱」

世田谷美術館では2005年よりエントランスホールで展開する実験的パフォーマンスシリーズ「トランス/エントランス」を開催してきた。これまでダンスや朗読劇などが行なわれてきたが、17回目となる今回はそのシリーズ最終回として、特別篇「夢の解剖─猩々乱」(シテ・長山桂三、ワキ・森常好、地謡・観世銕之丞、笛・藤田貴寛、小鼓・大倉源次郎、大鼓・大倉慶乃助、太鼓・林雄一郎、後見・鵜澤光、演出・ルカ・ヴェジェッティ、企画制作・塚田美紀)が、10月5日・6日の20時より行われた。

ルカ・ヴェジェッティ氏は2017年に、横浜能楽堂とジャパン・ソサエティの共同制作「SAYUSA─左右左」(この時は今回のシテ、長山桂三師の長男凜三さんが出演)の原案・演出・振付を担当し、能にも造詣の深いイタリア人演出家。

撮影:今井智己

月をイメージさせる照明がところどころに置かれたホール全体に響き渡ったお調べの音は、能楽堂で聴くそれとは違う独特な空気感でエントランスホールを包んだ。照明が絞られ、囃子方が階段から降りてきて踊り場に着座し、『猩々乱』が始まった。

エントランスから展示室につながるブリッジは、もともと能舞台の橋掛りをイメージして設計されたらしいが、エントランスホールからは見えない。しかし、その「橋掛り」からシテが近づいてくる様子が、光と影を使ってよく表現されていた。

ヴェジェッティ氏によれば、構造がシンプルで舞の部分が中心になる『猩々乱』を選んだとのことで、足拍子が響かない大理石のエントランスホールでは、「乱レ足」で水面を舞う猩々の舞にもぴったりの選曲だったといえる。

姿を見せず声の存在感を示した地謡や、舞台を見守る後見にも光と影の工夫が凝らされ、音の響きや奥行き感にいたるまで、ホール全体の空間演出が非常によく考えられていた。能は能舞台を飛び出したときに、ともすると違和感を感じることがあるが、能の持つポテンシャルの高さと演出の工夫が見事にマッチした公演であった。

(Noh+編集部)

本公演は2021年12月1日~2022年3月31日まで有料配信される。
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