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【インタビュー】 日本全国 能楽キャラバン!開催中 〜観世銕之丞師に聞く〜

2021年7月より、日本全国 能楽キャラバン!公演が各地で開催されているが、この一連の公演はすべて能楽協会の主催または共催で実施されている。このたびのキャラバン公演のことなどについて、能楽協会理事長の観世銕之丞師にお話をうかがった。

今回の能楽キャラバンについて─

現在は新規感染者数も落ち着いてきて、各能楽堂や劇場、飲食に関してもだんだん解放されていますが、全国の各自治体の公演は完全には回復していないのが現状です。来年に延期、つまり実質は今年の開催を中止する公演もいくつかあります。各自治体の担当者が責任を負えないということもあるのでしょう。また、これまで能をよくご覧になられていたお客様の中には、コロナ禍でステイホームが長かったこともあって、あまり外に出かけなくなった方もいらっしゃいます。その分、新しいお客様にも来ていただきたいと思っていますし、各能楽団体、各能楽師にとって、今回の能楽キャラバンがいろいろな公演の可能性を探るきっかけになってくれればと思っています。

能楽協会としての活動─

能楽キャラバンで、すぐに新しいお客様を大勢迎えるというわけにはいかないでしょうから、長期的な計画になりますが、小さいお子さんたちへの普及、また、学校の授業でより身近に能楽に触れてもらえるように、教職員の方への講座というものも重要です。遠回りなやり方のようですが、継続すればいつかはそれが効果を上げてくると思います。未来への投資と言うのでしょうか。能楽協会も決して余裕がある状況にはありませんが、ここは耐えて、そういった活動を続けていきたいと思います。

また、これまで能楽に触れてこなかった方々の中にも文化に興味を持っている方もいらっしゃいます。若い人たちへ向けて、というよりは年齢を問わず、全方向へ向けて情報を発信していくことも重要です。言葉、音楽、美術、それぞれに興味を持つものは異なるでしょうから、例えば、アートディレクターのような方と相談していく必要もあるでしょう。現に、各劇場のプロデューサーの方々の中には能をベースに展開、応用している方もいて、より魅力的な公演にするためにいろいろなことを考えていらっしゃいます。 

コロナ禍、アフターコロナを見据えて─

もちろん、能の公演自体は昔から変わりませんし、能の楽しみ方も変わりません。新しい方法を探ると同時に、一方では規格正しい「式能」(※毎年1回行っている、江戸時代の基本的番組編成である翁附五番能。今年第61回を迎えた)のような公演は、これまで通り継続していきたいと思っています。前理事長の野村萬先生の時からその姿勢は変わっていませんが、伝統を守ることと新しいことへのチャレンジ、この両輪を持ち合わせて能楽協会は活動してまいりたいと思います。また、コロナ禍以前から、能楽協会でもインターネットやデジタルの部分を活用した情報発信は増えています。私はもう60歳を過ぎて頭が固くなっていますから(笑)、そういう新しい発想は若い人たちに任せたいと思います。

観世銕之丞師

また、お稽古のことで言えば、コロナ禍でご高齢のお弟子さんがお稽古を辞めてしまったケースも多いです。また、オンラインでのリモート稽古をしている方もいらっしゃいますが、リモートですと、なんと言いますか雑味を消してしまって、それぞれの先生の魅力、個性をも消してしまう部分もあるのかな、と思います。従来のお稽古のままでよいのか、能をもっと深く知るための稽古というものもあるでしょうし、お稽古のやり方はみんなで考えていきたいですね。

奈良特別公演に向けて…奈良の魅力─

奈良の魅力といえば、建物が残っていないというところが魅力ですかね(笑)。江戸時代、長い間、天領(幕府の直轄地)で開発が進まなかったこともあるのでしょうが、東西南北、どこに行っても史跡が多く残っています。現在でも田んぼの真ん中に史跡が残っていたりします。

私の父が歴史的な場所を探訪することが好きだったので、私が小さい頃にはよく父に連れられて奈良に行きました。能には奈良ゆかりの曲が多いということもあり、父は私を連れて行ったのでしょう。でも当時は、例えば当麻寺の当麻曼荼羅を見せられても全く訳がわからなかったですけれども(笑)、二上山に沈んでいく日輪、一筋の光への憧れのようなものは、父が小さい頃から私に植え付けてくれたのかもしれません。また、学生時代は、関西公演があるとよく奈良まで足を伸ばして、菜の花が咲き、ヒバリの声が聞こえるようなところを歩きました。奈良は私自身、懐かしい場所でもありますし、「大和四座」と言われた大和猿楽発祥の地でもありますから、能のふるさととも言える場所です。今回の奈良特別公演は、奈良にゆかりのある曲を集め、奈良に特化した公演にいたしました。春日大社のおん祭りが行なわれていますが、芸能を神様に奉仕して、神様と同じように芸能を愛でる土地柄だと思います。

奈良は観光として見るところだけでなく、三輪そうめんや柿の葉寿司など食べ物も美味しい土地ですから、地元の方だけでなく、東京・大阪方面からも足を運んでいただければ幸いです。

日本全国 能楽キャラバン!奈良特別公演の詳細情報、公演の見どころは以下をご参照ください。

日本全国 能楽キャラバン!公演情報サイトはこちら

春日野公演特設サイトはこちら

※三輪山会館公演は終了

能楽協会HP「能楽を旅する」に、奈良・吉野 金峯山寺蔵王堂 編がアップされています。こちらもご参照ください。