曲の解釈と謡い方【三、三番目物】(5)

この曲は前場(まえば)に[クセ]がある。[クセ]は脇能(わきのう)では前場、修羅物(しゅらもの)では後場(のちば)ときまっているが、三番目物では前場と後場の両様がある。この曲は前場にあるから()グセであるが、この[クセ]の恋物語から、続くロンギでその名を明かして井筒(いづつ)の陰に消えて行くまで、よくシテの風姿に味到(みとう)して濃艶(のうえん)な情緒を表現すべきであるが、元来が少年少女の極めて純真な恋物語であるから、あまり(おも)っくれるのは曲趣に添わない。

後シテは、艶美(えんび)な男装の姿であり、また、すぐ舞に入るのであるから、かなり気がかかっていないと(おもむき)が出ない。舞のあともシテは動いているのだから地はすらりと謡うがよいが、しんみりした情趣がないといけない。特に大乗地(おおのりじ)の終わり「業平(なりひら)面影(おもかげ)」は最も情味(こま)やかに謡うべきところ。キリは〔大小序ノ舞曲〕の通型ともいうべきもので、調子を抑えてしっとりと謡い、よくその景趣を表現すべきである。