この曲は前場に[クセ]がある。[クセ]は脇能では前場、修羅物では後場ときまっているが、三番目物では前場と後場の両様がある。この曲は前場にあるから居グセであるが、この[クセ]の恋物語から、続くロンギでその名を明かして井筒の陰に消えて行くまで、よくシテの風姿に味到して濃艶な情緒を表現すべきであるが、元来が少年少女の極めて純真な恋物語であるから、あまり重っくれるのは曲趣に添わない。
後シテは、艶美な男装の姿であり、また、すぐ舞に入るのであるから、かなり気がかかっていないと趣が出ない。舞のあともシテは動いているのだから地はすらりと謡うがよいが、しんみりした情趣がないといけない。特に大乗地の終わり「業平の面影」は最も情味濃やかに謡うべきところ。キリは〔大小序ノ舞曲〕の通型ともいうべきもので、調子を抑えてしっとりと謡い、よくその景趣を表現すべきである。
