① 大小序ノ舞の女性夢幻曲
〈東北、井筒、野宮、半蔀、夕顔、仏原、采女、楊貴妃、二人静、江口、定家、芭蕉、源氏供養(身延、梅)〉
〈東北〉(続)
まずワキは修羅物と同じく旅僧である。修羅物でも言ったとおり、旅僧というのはそれ自身詩の風格に出来ていて、夢幻曲のワキには最もふさわしい。これを心えて謡わぬと曲趣を打ち壊すことになるが、特に三番目物においては、三番目的情緒に溶けこんで幽玄な趣に謡うことが肝要である。なおこの曲では春の長閑な旅ということも忘れてはならない。
前場は静的な詩の世界だということは修羅物でも言ったが、特に三番目物の前場は閑雅静寂な趣が肝要である。この曲は〈井筒〉や〈野宮〉のように閑かではないが、やはり、三番目物らしい静寂さがないといけない。静寂は情趣であり、演者の詩心である。ところが前にも言ったようにテンポを弛緩させることだと心えている人があるから始末が悪い。問答などで、この曲はシテのコトバに「スラリ」とあるからよいとして、〈井筒〉などには「閑カ」とあるところからむやみにダラダラと謡う人があるが、この「閑カニ」は心持を閑雅静寂にという意味であって、決してテンポを弛緩させることではない。
