後場はその五条あたりの夕顔の宿の古跡であって、半蔀屋の作り物が取り設けられ、まずその中からシテのいとも優雅な声調が流れ出すのであるが、ロンギの終わりで半蔀が押し上げられて白地の長絹に緋大口という清らに濃艶な姿を現わす。幽玄無類の風情である。
[クセ]では、夕顔の宿が町の中にある小家で、隣家から行者たちの朝の勤行が聞こえてくる光景から、源氏が初めてこの宿で夕顔の花を見染めた折のことなど、他の女性曲では見られぬ庶民的で鄙びた趣が描かれているのが非常によい。舞のあと、東雲の空が明けやらぬうちに再びもとの半蔀屋に消えて行くまで、いかにも清い三番目物だと思う。
