政府は10月25日、2022年度の文化功労者を発表し、能楽界から狂言方大蔵流の山本東次郎師が選ばれた。
山本東次郎師の功績は、「上演が途絶えていた狂言の復活にも精力的に取り組み、襲名披露公演で狂言「獅子聟(ししむこ)」を復活したのをはじめ、「川上」(昭和54年)、「射狸(いだぬき)」(同61年)、「若菜」(同62年)、「三社風流(さんじゃのふりゅう)」(同63年)、「菓争(このみあらそい)」(平成2年)、 「近衛殿の申状」(同5年)に出演した。こうした作品は台詞が台本として伝承されていても所作が伝わっていないものや、内容を再検討し新たに台本を作成する必要のあるものも多く、氏は演出や台本作成も担当し復活上演の実現に尽力した。多くの復活狂言や新作の上演にも尽力し優れた舞台成果を示し、狂言の発展と振興に努めた。令和元年には「東次郎 家伝十二番」と題して、家芸として重要な作品を連続上演する公演を行うなど、80歳半ばに達してもその芸は壮年の演者をも凌ぎ、万人の心を打ち、現在も山本家の当主、そして能楽界の第一人者として充実した活動を続けている」、「伝承に厳正忠実を貫き、山本家の剛直にして端麗な芸を的確に継承した」と評価された(一部抜粋)。
山本東次郎師は昭和12年(1937)生まれ。三世山本東次郎の長男として父に師事し、昭和17年(1942)に「痿痢」で初舞台。昭和47年(1972)に四世山本東次郎を襲名。芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞を受賞。紫綬褒章、旭日中綬章を受章。日本芸術院会員。重要無形文化財保持者(各個認定/人間国宝)。
また、現在の能楽界での文化功労者は、狂言方和泉流の野村萬師、野村万作師、シテ方観世流の大槻文藏師、ワキ方福王流の福王茂十郎師に次いで、今回の山本東次郎師で5名になる。