シテ方観世流、野村幻雪(のむら げんせつ)師(本名、野村四郎)が2021年8月21日に逝去された。享年84。葬儀は親族のみにて執り行われる。
野村師は1936年、狂言方和泉流6世野村万蔵の四男として東京に生まれる。幼少期より15歳まで狂言方としての修業を積み、3歳の時に『靱猿』の子方で初舞台を踏むが、1952年、25世観世元正に入門、師事。のち観世寿夫にも指導を受ける。25歳の時に能『俊成忠度』で初シテ。シテ方観世流として数多くの舞台に立ち、三老女すべて(『姨捨』『檜垣』『関寺小町』)を披演。
今年4月に26世観世清和宗家より永年の功績を讃え雪号を授与され、「幻雪」と名乗る(雑誌『観世』7・8月号に談話を掲載)。最後の能は『鷺』(5月29日、国立能楽堂特別公演)。
師は新作にも意欲的に取り組み、海外公演も多数。東京藝術大学教授就任以降は、他分野の芸能、実演家等との交流を深め、後進の指導にも熱心だった。
東京藝術大学名誉教授、日本能楽会会長、観世会顧問、銕仙会相談役。
文化庁芸術祭賞、芸術選奨文部大臣賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞、日本芸術院賞などを受賞。紫綬褒章、旭日小綬章を受章。2016年に重要無形文化財保持者(各個認定)に認定。著書に『狂言の家に生まれた能役者』(白水社)、『仕舞入門講座』(檜書店)など。
兄に狂言方和泉流の野村萬、万作、弟に万之介(故人、2010年)がいる。長男はシテ方観世流の昌司師。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。 合掌