野村万蔵師、「万蔵の会」を発足

狂言方和泉流の野村万蔵師が、自身の会『万蔵の会』を今年12月23日に発足させる。
11月5日に取材会が行われ、会の発足にあたり、万蔵師が思いを語った。

野村万蔵師

2005年の9世万蔵襲名から、当初10年間くらいは万蔵という名を背負うことだけに精一杯だったという師は昨年55歳を迎え、息子さんたちも狂言の道を歩んでいる。そろそろ自分自身のために舞台を勤めたいという気持ちから「万蔵の会」発足に至った。

12月23日は自身の誕生日でもある。本来は昨年始動する予定が、コロナウイルスの影響と、万蔵師が昨夏に胃がんを患ったことで延期となった。昨年10月に2週間ほど入院して胃の半分を摘出した師は、体重が元に戻らないものの現在はいたって良好だという。

万蔵の会の番組は、舞囃子「高砂」友枝雄人、狂言「痺(しびり)」野村万蔵・野村萬、狂言「金岡」(披キ)野村万之丞・野村万禄、新作狂言「彦市ばなし」野村万蔵・野村拳之介・野村又三郎。

「痺」は幼い子どもが初めて太郎冠者を演じる曲として知られる演目。万蔵師も5歳で初シテを勤めたのはこの曲で、今回50年ぶりに91歳の父、萬師と勤める。大人同士でこの曲を演じるのは極めて珍しい。木下順二作の新作狂言「彦市ばなし」は民話劇を元に作られ、熊本弁のセリフが特徴的な作品。万蔵師は1993年、96年に出演以来、25年ぶりにこの作品に挑む。また、長男の万之丞さんは、和泉流にとって「花子」「釣狐」に継ぐ大曲「金岡」を披く。

万蔵師は「『痺』は奇をてらわず、童心にかえるつもりで親子の時間を共有したい。楽しみです。『彦市ばなし』は若い頃に出させていただいた時には、良い経験をさせていただきましたが、無我夢中なだけでした。今回は55年生きてきた自分自身の人生観を彦市に投影したい」と、作品に対する意気込みを語った。また、自身の会については、「自分が楽しむ会でもあるが、息子たちへ受け継ぐ会でもある。近くで見て、感じてもらうことはとても重要だと思います」と語り、来年以降も12月23日に開催される。

2021年12月23日(木)18時半 宝生能楽堂 詳細はこちら