「流儀横断講座 シテ方五流儀の能楽師によるトークと実演」アーカイブ配信

7月24日(水)、国立能楽堂大講義室で「流儀横断講座『羽衣』シテ方五流儀の能楽師によるトークと実演」が行われた。

本講座は進行役の中村昌弘師(金春流)、武田宗典師(観世流)、髙橋憲正師(宝生流)、宇髙竜成師(金剛流)、大島輝久師(喜多流)が、毎回、テーマにそって実演を交えながら座談会形式で話をする。

左から武田宗典師(観世流)、高橋憲正師(宝生流)、中村昌弘師(金春流)、宇髙竜成(金剛流)、大島輝久師(喜多流)

武田宗典(たけだ むねのり/観世流)
1978年(昭和53年)東京生まれ。早稲田大学第一文学部演劇専修卒。父宗和、二十六世宗家観世清和師に師事。2歳「鞍馬天狗」花見にて初舞台。1988年「菊慈童」にて初シテ。重要無形文化財保持者(総合認定)。

髙橋憲正(たかはし のりまさ/宝生流)
1976年(昭和51年)金沢生まれ。父右任、十九代宗家宝生英照師に師事。東京芸術大学音楽学部邦楽科能楽専攻卒。3歳「鞍馬天狗」花見で初舞台。2004年「草薙」にて初シテ。重要無形文化財保持者(総合認定)。

中村昌弘(なかむら まさひろ/金春流)
1978年(昭和53年)東京生まれ。中央大学法学部法律学科卒。七十九世宗家金春信高師、高橋万紗師、髙橋忍師に師事。6歳「桜川」子方にて初舞台。2001年「花月」にて初シテ。重要無形文化財保持者(総合認定)。本講座では進行役をつとめる。

宇髙竜成(うだか たつしげ/金剛流)
1981年(昭和56年)京都生まれ。父通成、二十六世宗家金剛永謹師に師事。3歳「花筐」にて初子方。1993年「猩々」にて初シテ。重要無形文化財保持者(総合認定)。

大島輝久(おおしま てるひさ/喜多流)
1976年(昭和51年)福山生まれ。能 大島家5代目。祖父久見、父政允、塩津哲生師に師事。3歳「猩々」で初舞台。1989年「箙」にて初シテ。重要無形文化財保持者(総合認定)。

今回が12回目となるこの講座は、中村師が2015年に「道成寺」を披くにあたり色々な方に話を伺いたい、と思ったことがきっかけで始まったという。もともと本講座のメンバーは、それ以前の2009年に、お寺での朝講座から交流があった四名(金剛流を除く)。当初は東京を拠点に活動するその四名で始めたが、2020年から京都が拠点の金剛流宇髙師が参加して五流が揃う形になった。コロナ禍はオンラインのみの開催にするなどの工夫をして、これまで続いている人気の講座だ。

今回のテーマ「羽衣」は、もっともポピュラーといえる能の演目の一つだが、小書や所作、謡い方など五流を比べてみると様々。リレー形式で「羽衣」の一部を五人で謡い継いだり、同じ箇所を五人がそれぞれ謡ってみたり。どことどこの流儀が似ているなど、実演直後の感想を述べ合っていたが、その内容も大変興味深かった。

また、能の所作の名称は、流儀ごとに異なるため、言葉だけでは会話が行き違ってしまう。五人それぞれが所作を実演して、自分の流儀にはないものに感心するなど、五流の違いと、実演後のトークで各々の個性が際立つ楽しい講座だった。

「毎回必ず新しい発見があり、驚いています」と話すのは、進行役の中村師。年一回の本講座のテーマを探す役割も担っているが、発見がありそうなテーマを見つければ、「当日は必ず皆さんがいくらでも面白くしてくれる」そうだ。

長年お稽古をしている方には、普段あまり見ていない流儀の「常識」に驚かされたり、お稽古をしていない方には、次はどの流儀を観に行こうか、という観能のきっかけにもなる講座。

2024年7月31日から2024年8月30日まで、本講座をアーカイブ配信で視聴ができる。

視聴チケットは3,000円

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