3年に一度行っている、能楽(三役〔さんやく〕)研修生の募集が始まり、広く一般に応募を呼びかけている。
能楽はシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方(その中で笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方がある)の分業制で成り立っているが、主役をつとめるシテ方以外を「三役」と呼んでいる。その三役のプロを養成するのが国立能楽堂研修制度だ。1984年から始まったこの制度は、今回で第13期の募集となる。
募集する役・流儀は、ワキ方=福王流、笛方=森田流、小鼓方=幸清流、大鼓方=葛野流、太鼓方=金春流、狂言方=和泉流(野村万作家)。
第13期能楽研修の狂言方主任講師就任予定の野村萬斎師が、これから能楽師を目指そうとする若者に向けてメッセージを送った。
今の時代、YouTuberやインフルエンサーは誰でもすぐになれる職業というのに対し、能狂言の役者は職人と同じで、技術を身につけるためにかなりの時間を要する。古典芸能の世界は、現代日本人からすると外国に留学したような別世界に感じるかもしれないが、メソッドを身に着ければ、息の長いライフワークになる、とてもやりがいのある仕事。個人としても世界に対しても、可能性が広がると思う。

「プロの能楽師から学べることは、かけがえのない財産になる」と語った萬斎師。狂言方以外の講師陣も、もちろん第一線の舞台で活躍するプロの能楽師である。
なお、国立能楽堂の母体である独立行政法人日本芸術文化振興会が養成研修している、歌舞伎・文楽・寄席囃子などの研修期間が2年または3年であるのに対し、能楽(三役)の研修期間のみ6年と長い。その分、専門的技術をマンツーマンで学び、一人の能楽師として舞台に立てる力を確実に身につけられる。
映画『国宝』のヒットもあってか、歌舞伎の養成は例年より応募が多いそうだが、男子しか応募できない歌舞伎や文楽とくらべ、能楽(三役)は女子にも門戸が開かれ、修了後実際にプロの能楽師として活躍する女性も多い。
募集資格は中学卒業(卒業見込みを含む)以上で、原則23歳以下の方。経験不問。受講料は無料で、奨学金制度や宿舎利用も可能。少しでも興味を感じた方は、まず問合せをして欲しい。
詳細はこちら(国立能楽堂HPへ)

