① 大小序ノ舞の女性夢幻曲
〈東北、井筒、野宮、半蔀、夕顔、仏原、采女、楊貴妃、二人静、江口、定家、芭蕉、源氏供養(身延、梅)〉
三番目物といえば〔序ノ舞〕といってもよいくらいのものであるが、そのまた過半数は太鼓のはいらない〔大小序ノ舞〕の曲である。同じく序ノ舞物でも、〔大小序ノ舞〕の曲は〔太鼓序ノ舞〕の曲よりもいっそう幽玄味が深く、それだけに曲位も一段と高いものとされ、本格中の本格的三番目物といわれている。この類は三番目物の中でも最も筋の起伏に乏しく、抒情詩的な曲が多いようであるが、その実、人物の微妙な個性を表現する点ではこの類が最も秀れており、そうした人間の細かい描写が一段と幽玄味を深めることは、前にしばしば述べた。
ひとしく〔大小序ノ舞物〕の中で、〈千手〉はその他の現在曲と老女物とはやや趣を異にするから別の類に入れることとすると、この類の曲は、〈東北〉〈井筒〉〈野宮〉〈半蔀〉〈夕顔〉〈采女〉〈仏原〉〈楊貴妃〉〈二人静〉〈江口〉〈定家〉〈芭蕉〉〈身延〉〈梅〉の十四曲となり、そのほか、三番目物としては異例な、舞のない〈源氏供養〉を情趣からいってこの類に加えることとする。この類には傑作が多いが、法華経礼賛に終始する〈身延〉と、文章があまりにも古風な〈梅〉とは、あまり佳曲とはいえない。
