曲の解釈と謡い方【一、脇能】(6)

〔真ノ序ノ舞〕その他老神の類(2)

―白楽天―

構想も構成も極めて特殊な曲である。唐の詩人白楽天(はくらくてん)(ワキ)が日本の智慧(ちえ)を計るためにやって来たが、住吉明神の化身たる漁翁(前シテ)が漢詩と和歌との問答をして勝ち、後場は明神の出現で、型のごとく舞をまった後、諸々の神の出現(地謡で表現する)によって白楽天の船を追い返すというのがこの曲のあら筋である。

かように脇能としては全く破天荒(はてんこう)な内容ではあるが、神の威厳を示すということが主題であるからやはり脇能たることは失わない。殊に舞が〔真ノ序ノ舞〕だから全曲にその趣を体して荘重に謡い、しかも前場にはどこか風雅な味があってよいと思う。