NHK放送予定 2025年2月

NHK FM放送〈FM能楽堂〉

木曜日 午前11時〜11時50分

2月6日

内容演者
(観)弓八幡 津村禮次郎
ご案内 原瑠璃彦

2月13日

内容演者
(春)箙   辻井八郎
ご案内 原瑠璃彦

2月20日

内容演者
(剛)三山 今井清隆
ご案内 山田和人 

2月27日

内容演者
【再】
(観)高砂  
大西智久
ご案内 永原順子 

芸能きわみ堂

2月7日(金) 21:00~21:30 

(再放送)翌金曜 13:10~13:40

能の名作「黒塚」~鬼の心に分け入る~

今回は能の中で鬼能と呼ばれるジャンルの名作「黒塚」(安達原)の見方を初心者にも分かり易く紹介する。
「黒塚」とは奥州安達原(福島県二本松市)に伝わる鬼女伝説を題材に、人間の執着と業を描いた物語。しかし、番組ゲストで能に造詣の深い96歳の歌人・馬場あき子は、社会の暗部に孤独に生きる鬼女の怒りと哀しみは、“生きづらさ”を抱えながら日々を過ごす、現代を生きる私たちにも共通する普遍性があると、自身の著書 「鬼の研究」で述べている。
鬼となった女と現代を生きる我々の共通点とは何か?
「黒塚」の謡で描かれる内容を現代語で噛み砕いて理解し能が描こうとする人間の苦しみの核心に迫りたい。

※本番組で紹介する舞台映像は、人間国宝・友枝昭世がシテで出演、去年10月に収録した、世界遺産・厳島観月能「黒塚」の8K映像をダウンコンバートしたもの。
2月末の、BS8Kでの厳島観月能「黒塚」全編放送の 入門的な内容となる番組で、BS8Kへの視聴誘導も図る。

◼鬼となった女が抱える“終わりのない苦しみ”とは何か?
日本舞踊、歌舞伎、文楽の世界でも形を変えて長年上演され、さらに手塚治虫が漫画化、黒澤明が映画のワンシーンで題材にするなど、様々な影響を後の芸能に及ぼしてきた「黒塚」。
まずは、イラストで能本来のあら すじを解説。そして、「黒塚」の前半で鬼女が回し続けるキーアイテム、「糸車」に焦点を当てる。“終わりのない生の苦しみ”の象徴であり、謡の「かほどのはかなき夢の世を、などや厭はざるわれながら」を解釈する と、 “この世に失望しながら、捨てきれない執着心”の狭間で魂が救済を求めている姿が浮かび上がる。
スタジオトークと、原文と現代語訳を併記した詞章パターンの解説を通し、一介の哀れな女が鬼になるに至った心情を読み解いていく。

◼鬼女の源流を辿る・・・福島県の“鬼婆ワールド”を探訪
コミカルな鬼婆グッズ&フードに出会える「安達ケ原ふるさと村」。
さらに鬼女を供養している観世寺、伝説の語り部でもある住職に鬼女が住んでいたとされる「岩屋」やお墓など鬼女のルーツ様々を庭木アナがリポー ト。物語のルーツとなった伝説を地元の住職に語ってもらう。
つぶさに伝説を紐解いていくと、鬼となった女が殺してしまった相手は、実は、自分の娘であり、従順さと正義感が強いがゆえに運命の歯車が狂っていく人 生の皮肉が明らかに。
あえて具体的な苦しみの原因を描かない能の奥底にある、女の苦しみの原因を少しずつ明らかにすると、能面の奥に隠された鬼女の感情が多面的、立体的に見えてくる。

◼能に登場する鬼女を比べてみる!「葵上」「道成寺」「黒塚」徹底比較
能には、「黒塚」の他にも、鬼の面をつけた女が登場する興味深い演目、「葵上」と「道成寺」がある。いずれも、男に捨てられた女が怒りから鬼の姿になるという作品。
その2つと「黒塚」を比較し、共通点、相違点を 可視化すると、中世の時代に、草深い荒野に、さげすまれながら生きざるを得なかった女の怒りと悲しみの激しさが見えてくる。
鬼はただ恐ろしい得体の知れない存在ではなく、人間の弱さや羞恥心、苦悩を映し出す鏡 であり、私たちそのものなのかもしれないという「自分の中の鬼」と向き合う視点を得る。

<MC>高橋英樹(俳優)、大久保佳代子(お笑いタレント)、庭木櫻子(NHKアナウンサー)
<ゲスト案>馬場あき子(歌人・能作家)

2月14日(金) 21:00~21:30 

(再放送)翌金曜 13:10~13:40

狂言生き物コレクション!

日本の伝統芸能「狂言」。狂言では、なんと人間以外の生き物も大活躍!猿、犬、狸、馬、狐、タコ、蚊など、さまざまな生き物が登場。
そもそも狂言は、奈良時代に中国から伝わった「散楽」に、踊り・歌・そして形態模写などを加えた諸芸が源流とされ、「物まね」はいわば狂言のはじまりともいえる。
写実的にマネるだけでなく、大胆な省略や誇張が狂言流。「こんなものまで!?」という、いろんな生き物が登場する映像と一部実演をまじえながら、狂言ならではの「マネ方」を通しその魅力をお届けする!

■狂言生き物コレクション
狂言には人間以外にどんな生き物が登場するのか?
まずは狂言に出てくる様々な生き物を、ダイジェスト映像でご紹介 。
・馬…役者は面と黒頭(くろがしら)という黒い毛をつけ、ぬいぐるみのような「もんぱ」を着用し四つん這いで馬に扮する。
 演目:「止動方角(しどうほうがく)」など

・蚊/タコ…「うそふき」という面に、和紙のこよりを口に差し込むと「蚊」の完成!?この面はタコなどに扮するときも使われる。
 演目:「蚊相撲」「蛸」など

・ 猿…猿の面をつける。鳴き声は「ウキー」ではなく、「きゃあ」と鳴くのが狂言流。
 演目:「猿聟(さるむこ)」

※登場人物は猿だけ!しかも筋書を示すセリフと謡以外はすべて鳴き声で舞台が進行!!

■狂言鳴き声クイズ
面や装束で扮するだけでなく、鳴き声でも生き物を狂言流に表現。
「柿山伏」という演目では、山伏が難を逃れようと真似、カラスの鳴き声を「かあ」ではなく「こがー!」と表現する。
実は狂言の世界では私たちには なじみのない鳴き声が登場。それら鳴き声をクイズ仕立てで紹介する。

ゲストが出題⇒MC3人が回答⇒ゲストが手元の「○×棒」(など)で判定する!
Q.初級編例:ニワトリの鳴き声?⇒A.「コキャー!」(演目「鶏聟」より)
Q.中級編例:犬の鳴き声?⇒A.「びょうびょう」
Q.上級編(番外?)例:鯛の鳴き声は?⇒「たい、たい」!?
(狂言「盆山」より、鯛の鳴き真似をしろとムチャブリされた男が、デタラメに真似た鳴き声)

■“猿に始まり狐に終わる”
狂言と動物は切っても切れない関係 「猿に始まり狐に終わる」という言葉。
これは狂言の役者は「靭猿(うつぼざる)」で稽古を始め、ひとまずの“卒業論文”として「釣狐(つりぎつね)」の狐を演じて一人前になるという意味だ。
一見ユニークに演じられる生き物たちだが、そこには狂言の基礎から高度な技術までもが詰まっている。
ゲストの茂山茂も23歳で「釣狐」を披き、息子・茂山蓮が幼い頃に演じた「靭猿」の舞台にも一緒に立った。狂言にとって重要な2曲の 実演映像を見ながら、生き物を演じる、いわば「マネ」する狂言の原点について。

<司会>高橋英樹(俳優)、大久保佳代子(お笑い芸人)、庭木櫻子アナウンサー ≪※MC:AKスタジオにて1月23日収録予定≫
<スタジオゲスト予定>茂山茂(しげやましげる・狂言大蔵流)

古典芸能への招待

2月23日(日) 21:00~23:00 

能を彩る囃子

能を彩る、笛・小鼓・大鼓・太鼓という4つの楽器の演奏者を「囃子方」(はやしかた)と言う。 東京の能楽囃子方により構成される能・狂言の上演団体「東京囃子科協議会」では、定期的に主催公演 を行い、囃子の魅力を紹介している。今回は2024年12月の公演の模様を中継収録し、 東京囃子科協議会の理事長である小鼓方観世流宗家・観世新九郎のお話と共にお楽しみいただく。

●連調「天鼓(てんこ)」キリ
謡/今井泰行、金森良充
小鼓/清水和音・大山容子

連調とは謡(1名もしく複数名)と1種類の打楽器(小鼓・大鼓・太鼓)が数名で、能の一部分を演奏する上演形式。「謡宝生」と称されるシテ方宝生流の謡に、大倉流の小鼓方2人の演奏をお送りする。
曲は、息子に先立たれ悲嘆に暮れる父の姿と、亡霊となっても大好きな鼓を打ち興じる少年・天鼓の姿を描いた能「天鼓」。この能の最後、キリの部分をお聞きいただく。

●舞囃子「三輪(みわ)」
シテ/金森秀祥
笛/髙村裕
小鼓/幸信吾
大鼓/亀井実
太鼓/三島元太郎(人間国宝)

舞囃子とは面・装束を付けず、謡と囃子に乗せて能の一部分を舞う上演形式。
三輪明神の姿を描いた能「三輪」を、シテ方宝生流の金森秀祥の舞でお楽しみいただく。
人間国宝の三島元太郎による太鼓のほか豪華な囃子が舞を彩っていく。

●能「隅田川(すみだがわ)」
シテ(梅若丸の母)長島茂
子方(梅若丸の霊)塩津希介
ワキ(隅田川渡守)宝生常三
ワキツレ(旅商人)舘田善博
笛/松田弘之
小鼓/曽和正博
大鼓/國川純
地謡/友枝昭世(人間国宝)・香川靖嗣・中村邦生・狩野了一・内田成信・金子敬一郎・佐々木多門・大島輝久

人さらいに子供をさらわれ、心乱れた母。京の都から辿り着いたのは、隅田川のほとり。
川辺から聞こえる大念仏の声に耳を傾けると、その念仏は「この地で命を落とした少年を弔う声」だと知る。その少年こそが、探し求めていた我が子と知った母は…。
主役であるシテ方喜多流の長島茂を彩るのは実力者揃いの囃子方。世阿弥の息子・観世元雅による名曲を、名手の演能でご覧いただく。

◎NHK放送予定のホームページ

http://www.nhk.or.jp/koten/program/

*日時・内容が変更になることがございます。

問合せ先:NHK視聴者コールセンター 0570-066-066