能楽協会は、7月13日、14日に大阪・関西万博で開催される「未来につなぐ、能楽の世界」について、先日、記者会見を行った。成田達志師(小鼓方幸流。能楽協会常務理事・万博担当委員長)、観世喜正師(シテ方観世流。能楽協会常務理事・渉外委員長)、今回の総合演出の野村萬斎師(狂言方和泉流)が登壇し、概要を発表した。
「未来につなぐ、能楽の世界」は、「鬼」をテーマに、「日本の四季」をイメージさせた、360度の壁面と床面に大型映像を融合させる複合演出で、新たな価値体験の創造を目指すもの。

能楽では、恐ろしさだけでなく、悲しみや苦しみによって、鬼にならざるを得なかったものが登場し、鬼を通じて人間の心理を深く描写する。本公演では、〈翁〉と〈野守〉、そして、春の〈道成寺〉、夏の〈土蜘蛛〉、秋の〈菌/紅葉狩〉、冬の〈船弁慶〉のプログラムで、「鬼とは」「人間とは」というテーマを突き詰めていく。

総合演出の野村萬斎師は、同じく自身が演出を手がけた『能 狂言 鬼滅の刃』を例に挙げ、「鬼というテーマは能楽協会から頂戴したが、『鬼滅の刃』で、世界的な鬼のブームを再認識した。例えば〈船弁慶〉の知盛の怨霊は、戦争体験も含めた悲しみを背負っていて、単なる化け物ではない。お客様には没入体験で、自身で四季を旅するように感じてもらいたい」と話し、唯一プログラムに入っている狂言〈菌〉については、「何かの拍子に自然界が牙を剥く、という人間にとっての鬼のような存在、新型コロナウイルスを視野にいれている」と述べた。
また、〈翁〉と〈野守〉には、野守の鏡に、自然をうつし、芸を見る自分の心を投影することが意識されているという。
本公演は全4公演で、主に関西地域で活動する能楽師が延べ約200名出演する予定。
「未来につなぐ、能楽の世界」
日時 2025年7月13日(日)①14:30開演 ②18:30開演/7月14日(月)①15:30開演②19:00開演
※計4回公演、各回1時間程度
会場 大阪・関西万博会場 EXPOホール「シャインハット」(※収容人数 約1,850名)
入場無料(要予約)※万博会場への入場チケットは必要。
万博予約システムのほか、能楽協会の特設サイトで予約が可能