曲の解釈と謡い方【二、修羅物】(2)

また脇能の後場には必ず太鼓がはいるが、修羅物の後場には太鼓がはいらない。もっとも二、三、太鼓がはいる曲もあるが、それは後シテの出のところだけであって後場の主要部ではない。このことも修羅物が脇能のような陽性なものでないことを物語っている。

以上は修羅物を総括した特色であって、個別に見ればいろいろな曲趣がある。脇能は舞の種別によって分類することができたが、修羅物には舞がないからそうした類別はできない。〔翔〕の有無ということはあるが、これは類別の標準にはならない。修羅物は強いて細別する必要がないと思うが、これを分けるとすれば「強い修羅物」と「優しい修羅物」といったものに分けるのがよいと思う。面でいうと平太(へいだ)中将(ちゅうじょう)の別である。