曲の解釈と謡い方【三、三番目物】(3)

① 大小序ノ舞の女性夢幻曲
〈東北、井筒、野宮、半蔀、夕顔、仏原、采女、楊貴妃、二人静、江口、定家、芭蕉、源氏供養(身延、梅)〉

三番目物といえば〔序ノ舞(じょのまい)〕といってもよいくらいのものであるが、そのまた過半数は太鼓(たいこ)のはいらない〔大小(だいしょう)序ノ舞〕の曲である。同じく序ノ舞物でも、〔大小序ノ舞〕の曲は〔太鼓序ノ舞〕の曲よりもいっそう幽玄味(ゆうげんみ)が深く、それだけに曲位も一段と高いものとされ、本格中の本格的三番目物といわれている。この類は三番目物の中でも最も(すじ)起伏(きふく)(とぼ)しく、抒情詩(じょじょうし)的な曲が多いようであるが、その実、人物の微妙な個性を表現する点ではこの類が最も(すぐ)れており、そうした人間の細かい描写が一段と幽玄味を深めることは、前にしばしば述べた。

ひとしく〔大小序ノ舞物〕の中で、〈千手(せんじゅ)〉はその他の現在曲と老女物とはやや(おもむき)を異にするから別の類に入れることとすると、この類の曲は、〈東北(とうぼく)〉〈井筒(いづつ)〉〈野宮(ののみや)〉〈半蔀(はじとみ)〉〈夕顔(ゆうがお)〉〈采女(うねめ)〉〈仏原(ほとけのはら)〉〈楊貴妃(ようきひ)〉〈二人静(ふたりしずか)〉〈江口(えぐち)〉〈定家(ていか)〉〈芭蕉(ばしょう)〉〈身延(みのぶ)〉〈(うめ)〉の十四曲となり、そのほか、三番目物としては異例な、舞のない〈源氏供養(げんじくよう)〉を情趣からいってこの類に加えることとする。この類には傑作(けっさく)が多いが、法華経(ほけきょう)礼賛(らいさん)に終始する〈身延〉と、文章があまりにも古風な〈梅〉とは、あまり佳曲(かきょく)とはいえない。