曲の解釈と謡い方【二、修羅物】(6)

中将の類

― 忠度、敦盛、経正、清経、通盛、朝長、巴 ―
(俊成忠度、生田敦盛、知章)

大部分が平家の公達(きんだち)の敗戦譜である。由来敗戦には詩を伴うものが多いが、殊に平家の公達はロマンスに富みエピソードが多い。忠度ただのりと歌道、敦盛あつもり青葉(あおば)の笛、経正つねまさと琵琶、清経きよつね通盛みちもりの恋情のごときであるが、この種の曲では戦いそのものよりもむしろそうしたエピソードが主題となっている。したがって謡もヨワ吟が非常に多い。また後シテの姿も、平家の公達は武人としては()さ男であるから、色の白い中将(ちゅうじょう)もしくは敦盛(あつもり)の面に梨子打烏帽子(なしうちえぼし)単法被(ひとえはっぴ)または長絹(ちょうけん)大口(おおくち)といった、平太物に比べてはるかに優美な姿である。

それだけにこの種の曲は修羅物の本筋からは外れたような感がないでもないが、その代わりに曲趣が柔かくて幽玄味が深い。真の修羅物の味は平太物あるいは老武者のほうが(まさ)るかもしれないが、人間そのものを描いた劇味と詩趣においてはこの種の曲のほうが(すぐ)れていると思う。

この類には、忠度と敦盛を主人公としたものが二曲ずつあるが、〈俊成忠度しゅんぜいただのり〉と〈生田敦盛いくたあつもり〉とは構想に無理がありすぎて佳作とはいえない。また〈知章ともあきら〉も内容が単調で詩趣に乏しいが、そのほかの前述のような平家の公達の曲はみな傑作である。なおこの類には唯一の源氏方として〈朝長ともなが〉があり、また木曽義仲の愛妾〈ともえ〉も女武者として当然この類にはいるが、二つとも佳曲である。