中将の類
― 忠度、敦盛、経正、清経、通盛、朝長、巴 ―
(俊成忠度、生田敦盛、知章)
大部分が平家の公達の敗戦譜である。由来敗戦には詩を伴うものが多いが、殊に平家の公達はロマンスに富みエピソードが多い。忠度と歌道、敦盛と青葉の笛、経正と琵琶、清経、通盛の恋情のごときであるが、この種の曲では戦いそのものよりもむしろそうしたエピソードが主題となっている。したがって謡もヨワ吟が非常に多い。また後シテの姿も、平家の公達は武人としては優さ男であるから、色の白い中将もしくは敦盛の面に梨子打烏帽子、単法被または長絹に大口といった、平太物に比べてはるかに優美な姿である。
それだけにこの種の曲は修羅物の本筋からは外れたような感がないでもないが、その代わりに曲趣が柔かくて幽玄味が深い。真の修羅物の味は平太物あるいは老武者のほうが優るかもしれないが、人間そのものを描いた劇味と詩趣においてはこの種の曲のほうが秀れていると思う。
この類には、忠度と敦盛を主人公としたものが二曲ずつあるが、〈俊成忠度〉と〈生田敦盛〉とは構想に無理がありすぎて佳作とはいえない。また〈知章〉も内容が単調で詩趣に乏しいが、そのほかの前述のような平家の公達の曲はみな傑作である。なおこの類には唯一の源氏方として〈朝長〉があり、また木曽義仲の愛妾〈巴〉も女武者として当然この類にはいるが、二つとも佳曲である。
