竜神その他〔舞働〕の類(3)
―嵐山―
前後を通じて桜花爛漫の春を配景としたところに柔らか味があるが、やはり〔真ノ次第〕、〔真ノ一声〕と正式に構えた本脇能であるから、晴やかに美しい春らしい趣を表現するとともに、脇能の清らかな趣を失わないというのが急所であろう。
前シテの花守の老人は子守の明神、ツレの姥は勝手の明神の化身であって、この二体の神が後場のツレ(一人は天女)として出現する。後シテは蔵王権現で、やはり大飛出である。二人のツレは〔下リ端〕の囃子で出場して〔中ノ舞〕を相舞するが、シテは〔舞働〕をまわない。〔下リ端〕あとの〔渉リ拍子〕は特殊な乗り方で晴やかに謡い、後段の大乗地は賀茂と同じく豪快に謡うべきである。