江戸時代から人々の足もとを支える手作りの足袋

能楽の足袋を未来につなぐために

大野屋總本店のような本格的な店は、()(おく)れしてなんとなく入りづらいものである。しかし、茂雄さんをはじめ、店のみなさんはとっても気さくなお人柄だ。能を習っている方は発表会用にネル裏を、能に関心を持っている方は着物用に普通の足袋を購入してみてはいかがだろうか。きっと特別な一足になるはずだ。能を習っている友人が「大学一年生のときに、能楽サークルの先輩に足袋専門店に連れていってもらい、初めてネル裏の足袋を買った」と言っていた。こんな風に、通い慣れた人が初心者を連れていくという気配りももっとあってもいいのかもしれない。また、檜書店本店売店(東京・神田小川町)では、大野屋總本店製のネル裏の既製品を取り扱っているので、そちらで購入するという方法もある。買うという行為は、職人へのなによりの応援になる。

(『観世』2016年10月号掲載)