能楽専門の袴を作り続ける老舗のものづくり【後編】

袴をたたむコツ

最後に、仕舞袴のたたみ方について佐藤さんにご指南いただいた。袴をたたむときのポイントは、ひだをきれいに揃えることと、長い紐をきちんと処理すること。たたみ方には、いろいろな方法があるが、たんすで保管する場合におすすめの「三つだたみ」を紹介する。

前紐と後紐を重ねて、斜めに交差させて袴の三分の二くらいで折り返す。

平置きの状態

袴の下の三分の一を折り上げる。

さらに三分の一、折り上げる。(三つだたみ)

このたたみ方の利点は、はかまを折る回数が少ないので折り線が少ないこと、紐の厚みが薄いので袴の表面に紐の跡が付きづらいこと。この他、持ち運びに便利な「石だたみ」というたたみ方もある。

石だたみ

もちやさんのホームページはこちら https://www.i-mochiya.com

取材後記

これまで「もちや」という店があることは知っていたが、どんな人が袴を作っているのかは、よくわからなかった。近年は、「もちやの袴や裃は、質はよいが、値段が少し高い…」という声も聞こえてきており、少し気になっていた。このたび、佐藤さん、阿部さんからたくさん話をうかがい、努力をしながら、伝統のものづくりを必死で守ろうとしている熱意をひしひしと感じた。なんとかもちやの仕事を、未来に継承してほしい。

今井基さんもおっしゃっていたが、能楽界全体がものづくりの現場の実情をもう少し踏み込んで理解し、その後押しになるような具体的な動きが作れたら、上向く部分もあるのではないかと感じる。

また、このたびの取材を通して、能楽の袴にはわからないことが多いことも、痛感した。引き続き取材を継続し、また続編の記事をご紹介できたらと考えている。

「伝統芸能の道具ラボ」主宰 田村たむら 民子たみこ

1969年、広島市生まれ。能楽や歌舞伎、文楽などの伝統芸能の裏方、職方を主な領域に調査や執筆を行う。作れなくなっている道具の復元や調査を行う「伝統芸能の道具ラボ」を主宰。観世流のお稽古歴、7年。

東京新聞などに執筆。