コラム
本田家の庭
布由樹さんの父・光洋さんは、昭和天皇の植物研究の相手を務めていた本田正次(1897-1984)とご縁があり、子ども時分に随分とかわいがられたそうだ。植物を採取しては「先生、これ見てください」と質問をし、花草の名前やその生態を細やかに教えてもらっていたという。こうした生い立ちからおのずと植物に精通し、それが造花選びや作り物の飾り方にも波及していく。「この植物はこういう葉の付き方はしないはず、などと、よくダメだしが飛んでくるんですよ」と布由樹さん。
取材が終わって庭を見せていただくと、ぎっしりと植物の鉢が並んでいた。そのなかには〈定家〉に出てくるテイカカヅラなど能にちなんだ植物もいくつかあった。そして圧巻だったのが大きなしだれ桜。春にはちょっとした花見の名所になっているそうだ。
本田布由樹 プロフィール
シテ方金春流。1980年、東京生まれ。重要無形文化財(総合)指定。(公社)能楽協会名古屋支部常議員、(公社)金春円満井会理事。父・本田光洋に師事。「金春会定期能」「円満井会定例能」「名古屋能楽堂定例公演」などの場で年数回シテ(主役)を勤めている。5歳の時に「善知鳥」子方で初舞台、今までに「獅子」「乱」「道成寺」を披いている。また、早稲田大学の金春会(学生能楽サークル)を指導。
アメリカ、ドイツ、デンマーク、クロアチア、カナダなどでの海外公演、講座にも参加し、平成23年1月の日独修好150周年記念事業のドイツ巡回能楽公演では、「船弁慶」の源義経役などを演じた。
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「伝統芸能の道具ラボ」主宰 田村 民子
1969年、広島市生まれ。能楽や歌舞伎、文楽などの伝統芸能の裏方、職方を主な領域に調査や執筆を行う。作れなくなっている道具の復元や調査を行う「伝統芸能の道具ラボ」を主宰。観世流のお稽古歴、7年。
東京新聞、朝日・論座、朝日小学生新聞などに執筆。