次に扇面に描かれるきまりの模様をみていく。
以下の写真では、1種類ずつ紹介するがそれぞれ地や図の色に数種類バリエーションがある。
観世流は、渦巻きを三段重ねた帯が二筋ならんだ「三段水巻(観世水)」。親骨には「三ツ彫」という透かし模様が施されている。
例外として梅若六郎家は、独自の扇を用いる。親骨の透かし彫りは、松の葉と梅。扇面の図案は、左右の上端と中央下に梅花七輪を散らした雲形を配し、飛翔する鶴が三羽描かれている。親骨の彫りの図案は、松葉と梅。
宝生流は、五カ所に横雲を描いた「宝生五雲」。
金春流は、大きな円を五つ散らした「五星」を多く使うほか「金春雲」という図案もある。
金剛流は、雲を横につなげたような模様の「金剛雲」を多く使うほか、「九曜星」という図案もある。
喜多流は、横雲を三つ配した「三つ雲」。
狂言大蔵流は、三本の若松を配した「霞若松」。
※この連載は3回にわたってお届けします。
次回〈その3:一本の扇に多くの職人が関わる〉
「伝統芸能の道具ラボ」主宰 田村 民子
1969年、広島市生まれ。能楽や歌舞伎、文楽などの伝統芸能の裏方、職方を主な領域に調査や執筆を行う。作れなくなっている道具の復元や調査を行う「伝統芸能の道具ラボ」を主宰。観世流のお稽古歴、7年。
東京新聞、朝日・論座、朝日小学生新聞などに執筆。