曲の解釈と謡い方【一、脇能】(9)

前シテは里の女ではあるが実は神の化身であるから、唯の美人になってはいけない。脇能の女性は、次に述べる女神の曲も同様であるが、人間離れのした神性を(そな)えることを要する。優美ではあり艶麗(えんれい)ではあるが、その上になお清らかにして犯しがたい威厳が必要である。この曲は〈竹生島〉と違って、ワキは〔真ノ次第〕、シテは〔真ノ一声〕で出るのだから、総じてそうした心構えを忘れてはならない。

後シテは雷神で、面が大飛出(おおとびで)である。これは竜神ほど敏捷ではない代りに輪廓(りんかく)が一段と大きいから、素謡でも最も豪快に謡われたい。